酸素療法の豆知識
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酸素療法開始の目安
酸素療法は、成人や小児、生後28日以降の乳幼児では、急性期において、室内の酸素吸入下で動脈血酸素分圧が60mmHgあるいは酸素飽和度が90%以下で開始します。
また、このほかにも、臨床的に酸素吸入が必要と判断した場合に、酸素療法を開始します。
一方、慢性期の場合には、動脈血酸素分圧が60mmHgあるいは酸素飽和度が89%以下で酸素吸入を開始します。
なお、酸素吸入を開始するにあたっては、絶対的な禁忌症はありません。
しかし、高濃度酸素吸入により、肺への障害が引き起こされたり、新生児において後水晶体線維増殖症が引き起こされたりする可能性があり、注意が必要となっています。
また、慢性呼吸不全の患者さんにおいては、低酸素血症を改善させると、かえって呼吸抑制が生じ、高二酸化炭素血症による意識障害などの合併症が引き起こされることもあります。
酸素が欠乏する要因
酸素の不足は、肺での酸素の取り込みが上手くできない場合や、体内の各臓器へ酸素を上手く運べない場合などで引き起こされます。
このうち、酸素の取り込みが上手くできない要因として、そもそもの外気の酸素濃度が低い場合、例えば、高地における酸素濃度の希薄や、室内の換気不全による低酸素などが挙げられます。
また、気管支炎や肺炎などの肺疾患の悪化により、酸素の換気能力が低下した場合も、酸素不足となります。
そして、中枢神経に異常があったり、筋疾患があったりする場合には、呼吸をする際に胸郭や横隔膜が広がらず、肺の換気を十分に行えない場合があります。
この場合も、肺で酸素の取り込みが上手く行えなくなるため、動脈血酸素分圧が低下していきます。
一方、肺でのガス交換に障害がない場合でも、心不全などによる循環障害、貧血などによる血液の酸素運搬能の低下、一酸化炭素中毒によるヘモグロビンの酸素結合能の低下などで、赤血球が酸素を運べずに組織の酸素不足が引き起こされます。
また、シアン中毒などによる組織での酸素利用度の障害、発熱や甲状腺機能の亢進、運動などによる組織の酸素消費量の増大によっても、酸素不足が進行してしまいます。
酸素は多すぎても毒
酸素の不足は、低酸素血症を引き起こしますが、酸素濃度が高い場合でも、さまざまな症状が引き起こされます。
医学的には、この高酸素状態のことを、酸素中毒症(oxygen poisoning)や高酸素症(hyperoxia)と言います。
一般に、酸素過剰症は、高濃度酸素を長時間吸入した場合や、高気圧酸素療法下での高分圧酸素曝露により引き起こされます。
酸素過剰症の場合、胸骨の下に不快感が生じやすく、咳や悪心、疲労感、呼吸困難、肺活量の減少などの症状が引き起こされます。
因みに、高濃度酸素を吸入した場合、体内における作用機序は、まずミトコンドリアやミクロソームでO2イオンやH2O2などの活性酸素(フリーラジカル)が多く発生します。
次に、これが生体膜リン脂質を過酸化させ、肺毛細管上皮などの細胞を障害し、さらに各組織の酸化が促され、酸素過剰症が引き起こされます。
代表的な酸素マスク
低酸素血症は、生命に危機をもたらし、各臓器の機能不全を引き起こす可能性があります。
そのため、酸素が不足している患者さんには、酸素療法を行って、体内の酸素不足を改善させる必要があります。
その際には、鼻や口を覆う酸素マスクを着用し、吸入酸素濃度を高めていきます。
この酸素マスクには、目的別に幾つかの種類があります。
一般的に使用される酸素マスクは、単純酸素マスクと言います。
また、高濃度酸素を投与する場合、リザーババッグを付けた部分再呼吸マスクを使用します。
このほかにも、一方弁を取り付け、再呼吸を防止した非再呼吸マスクがあり、慢性閉塞性肺疾患の患者さんなどに対して使用するベンチュリー・マスクなどもあります。
因みに、ベンチュリー・マスクは、ベンチュリー効果を利用して、空気を取り入れて酸素濃度を調節できるため、比較的正確な酸素濃度の吸入が可能となります。
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