後遺症を少なくする脳腫瘍手術

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脳◎脳腫瘍とは・・・

脳腫瘍(のうしゅよう:brain tumor、cerebral tumor)とは、頭蓋骨内に発生する腫瘍のことです。

この脳腫瘍には、良性のものと、悪性のものとがあります。


このうち、良性の脳腫瘍は、髄膜など、そのほとんどが脳の外にできる腫瘍です。

一方、悪性の脳腫瘍は、脳の本体(実質)にできる腫瘍で、いわば、「脳のがん」になります。


◎悪性の脳腫瘍に多いのは・・・

悪性の脳腫瘍に多いのは、神経膠腫(しんけいこうしゅ:glioma、glial tumor)と呼ばれるグリア細胞由来の腫瘍です。

この神経膠腫は、「グリオーマ」とも呼ばれ、日本国内では、年間10万人に4~5人の割合で発症しています。


また、神経膠腫は、脳腫瘍発症者のおよそ26%に上り、悪性脳腫瘍の代表的な疾患となっています。


◎悪性脳腫瘍の特徴

悪性脳腫瘍は、正常細胞と腫瘍細胞とが入り混じった状態で大きくなります。

そのため、「がん」と「そうでない部分」との境目がはっきりとは分からなくなっています。


また、悪性脳腫瘍は、発生後に、急速に大きくなる特徴があります。


特に、神経膠腫の中で、最も悪性度の高いグレード4は、「膠芽腫(こうがしゅ:グリオブラストーマ:glioblastoma)」と呼び、3か月程度で急速に大きくなります。

また、膠芽腫は、週単位で、どんどん症状が悪化していき、放置していると、手遅れになることもあります。


<膠芽腫の特徴>


発生頻度:脳腫瘍全体の約11%

性差:男性3に対して、女性2の割合

好発部位:大脳半球に多く、特に、前頭葉、側頭葉に好発

腫瘍細胞:多種多様な細胞が高密度に存在。核の大小不同、分裂像、多核、巨核、壊死層の出現、血管新生、内皮細胞の増殖、偽柵状配列(pseudopalisading)など



◎悪性脳腫瘍は、摘出が難しい

悪性脳腫瘍は、手術で摘出する場合、再発を防止するために幅広く切除する必要があります。

しかし、脳の組織を切り取りすぎると、正常な細胞まで失われ、話せなくなったり、動けなくなったりする後遺症のおそれが出てきます。


そのため、悪性脳腫瘍の発見が遅れた場合、手術が出来ない悪性脳腫瘍と判断されるケースも出てきています。


◎技術の進歩

近年、医療技術が進歩して、以前は、手術不可能と判断されていた悪性脳腫瘍でも、手術ができるケースが増えてきています。


例えば、患者さんの意識を保った状態で悪い部分を切り取る「覚醒下手術」という手術法が開発されています。

また、腫瘍の取り残しを防ぐため、手術中に脳を何度もMRIで撮影する「術中MRI(磁気共鳴画像装置)」も活用されています。


最近では、これらの技術を駆使して、脳腫瘍の手術を行い、患者さんの生存期間を大きく延ばすことに成功しています。


◎覚醒下手術では・・・

覚醒下手術(かくせいかしゅじゅつ)では、まず、患者さんに全身麻酔を受けてもらい、眠った状態で開頭手術を行います。

そして、病巣が現れたら、局所麻酔に切り替えて、患者さんに目覚めてもらいます。


その後、腫瘍を切り取る際には、執刀医と患者さんが会話をしながら、どこを切ってはいけないのかを慎重に確認しながら進めていきます。

なお、患者さんへの質問では、タブレット端末を使い、患者さんに果物や動物などの絵を見てもらうこともあります。


また、「大好きな食べ物は?」とか、「数字を1から数えてください」など、簡単な質問を繰り返すこともあります。

こうすることで、執刀医は、会話や質問を通して、患者さんの脳の各部位の働きを確かめながら、切除できる範囲を見極めています。


◎術中MRIでは・・・

術中MRIは、脳腫瘍の深さを確認する目的で行われます。

脳腫瘍の手術の場合、執刀医から肉眼で見える範囲は、脳の表面にある病巣になります。


この表面に出ている腫瘍に対して、どこを切り取ればいいのかは、患者さんに覚醒してもらって、確認しながら切ることができます。

しかし、切ることができる深さは、肉眼からは判断することができないため、その都度、MRIで撮影して、どの深さまで切り込めばよいのかを判断していくことになります。


なお、切除できない部分が多いほど、脳腫瘍の再発リスクが高くなります。

そのため、腫瘍を可能な限り切除するために、MRIで何度も確認しながら、腫瘍を摘出していきます。


◎腫瘍の摘出後

脳腫瘍の摘出後は、再発防止のために、放射線治療と抗がん剤による化学療法を組み合わせた治療をしていきます。

こうすることで、わずかに残った腫瘍細胞を可能な限り叩いていくことができます。


また、手術後は、一時的に言語能力や運動機能、記憶などが低下してしまうことがありますが、リハビリを続けることで、徐々に回復に向かいます。


近年では、手術後10年以上経過しても、元気に暮らしている患者さんが増えてきています。

なお、「覚醒下手術」や「術中MRI」を駆使した脳腫瘍摘出手術は、国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)や筑波大学病院(茨城県つくば市)など、全国の約20の施設で行われています。
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