感染症の話

インフルエンザの治療は、進化中

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健康雑学◎インフルエンザとは・・・

インフルエンザ(influenza)とは、オルトミクソウイルス科のインフルエンザウイルス(influenza viruses)による感染症状のことで、医学的には、流行性感冒(流感:epidemic catarrh)と言います。

このインフルエンザは、飛沫により感染し、数日の潜伏期を経て、発熱や咳、鼻水、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感などの呼吸器症状や全身症状が現れます。


通常、成人の場合、インフルエンザを発症した後、合併症がなければ、5~7日で回復します。

しかし、小児や高齢者の場合、体力や免疫力が衰えていると、最悪、死に至ることもあります。


◎日本国内では、主に冬に流行

インフルエンザは、毎年、冬になると流行期に入り、全国で数十万人~数百万人の患者さんが発生します。

特に、A型インフルエンザウイルスは、強い伝染性(伝播性)を持ち、過去に、大流行を引き起こしています。


なお、インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型の3種類があります。

このうち、A型とB型は、成人や小児に感染して、流行を引き起こします。


一方、C型は、主に乳幼児に感染するものの、はっきりとした流行の形をとらなくなっています。


◎インフルエンザの治療は・・・

インフルエンザの治療は、タミフルやリレンザが登場するまで、対症療法のみとなっていました。

この対症療法は、インフルエンザウイルスを直接抑える治療法ではなく、熱が出たときには解熱剤を用い、体力が消耗したときには、点滴で栄養剤を補給するといった治療法になります。


しかし、1999年(平成11年)にインフルエンザの検査キットが開発され、2000年(平成12年)にリレンザが、2001年(平成13年)にタミフルが登場しました。

これにより、従来のインフルエンザ治療は、劇的に変化し、早期発見、早期治療が可能な感染症になりました。


◎インフルエンザ治療薬は、進化中

インフルエンザ治療薬(抗インフルエンザ薬)は、タミフルやリレンザのほか、イナビル、ラピアクタなどが開発され、次々と効果的な治療薬が登場しています。

なかでも、2018年(平成30年)2月に、厚生労働省に製造販売を承認された「ゾフルーザ」は、たった1回の服用でインフルエンザ治療が完了する世界初の内服薬です。


このゾフルーザの登場により、インフルエンザによる辛い症状を早期に改善させることができるほか、インフルエンザで命を落とす方を劇的に減らせる効果が期待されます。


<代表的な抗インフルエンザ薬>


タミフル:内服薬(1日2回、5日間服用)

リレンザ:吸入薬(1日2回、5日間吸入)

イナビル:吸入薬(1回の吸入で済みます。)

ラピアクタ:注射薬(点滴静注により投与。速効性に優れています。)

ゾフルーザ:内服薬(1日1回の服用のみで済みます。)



◎タミフルやリレンザなどは、ノイラミニダーゼ阻害薬

タミフルやリレンザ、イナビル、ラピアクタは、「ノイラミニダーゼ(NA)阻害薬」とも呼ばれます。

これは、タミフルやリレンザなどが、ノイラミニダーゼという酵素の働きを阻害する作用を持つからになります。


なお、ノイラミニダーゼという酵素は、インフルエンザウイルスが増殖したあとに、それぞれのウイルスをつないでいる鎖を切り離す働きがあります。


因みに、インフルエンザウイルスは、人の細胞内で増殖する際には、数珠つなぎに鎖でつながりながら増えていきます。

ただ、それぞれのインフルエンザウイルスが、個別に活動するためには、お互いをつなぎ止めている鎖を断ち切って、細胞外へ出て行く必要があります。


ノイラミニダーゼは、この鎖を断ち切る働きをして、ウイルスの活動を後押しします。

そのため、タミフルやリレンザなどは、ウイルスの増殖を直接抑えるのではなく、この鎖が切れないようにして、ウイルスの活動を阻害します。


◎タミフルやリレンザは、発症後48以内の投与が原則

タミフルやリレンザなどのインフルエンザ治療薬は、患者さんが発熱や咳などの症状を発症してから、48時間以内の投与が原則となっています。

これは、これらの治療薬が、ウイルスの増殖を抑えるのではなく、ウイルスの活動を妨げる薬だからです。


そのため、インフルエンザウイルスの数が、多くなりすぎる前に薬剤を投与します。

なお、発症後48時間以内としているのは、インフルエンザウイルスは、その症状が出てから48~72時間で、最もその数が多くなる「ウイルスの最大量」に達するからになります。


因みに、タミフルやリレンザなどを投与された方では、4人に1人が投与後12時間以内にその症状が軽くなり、約6割の方が24時間以内に熱が下がっています。

また、7割以上の方が、投与後3日以内に通常の生活に戻れています。


◎最後の切り札は、アビガン

インフルエンザ治療薬は、タミフルやリレンザのほかに、アビガン(薬剤名:ファビピラビル)という薬も開発されています。

このアビガンは、インフルエンザウイルスが増殖する際に、RNAポリメラーゼの働きを阻害して、ウイルスの増殖を直接抑制します。


そのため、アビガンは、タミフルやリレンザなどのように、投与時間に制約がなく、インフルエンザの症状が重症化したあとや、発症から時間が経過していても効果を現します。

なお、政府は、インフルエンザウイルスがタミフルやリレンザなどの薬剤に対して耐性を獲得したとき用の備えとして、アビガンを温存しています。

因みに、このアビガンは、アフリカでエボラ出血熱が大流行した際に、患者さんへ緊急的に投与され、有用な効果を現しています。


また、アビガンは、インフルエンザウイルス以外のウイルス感染症である黄熱病や西ナイル熱にも効果があったと報告されています。


◎世界初の治療薬、ゾフルーザ

ゾフルーザも、アビガンと同様に、インフルエンザウイルスの増殖を直接阻害する治療薬になります。

このゾフルーザは、インフルエンザウイルスがmRNA合成を行う際に働く、キャップ依存性エンドヌクレアーゼという酵素を選択的に阻害することで効果を発揮します。


なお、キャップ依存性エンドヌクレアーゼは、宿主細胞由来のmRNA前駆体を特異的に切断して、ウイルスのmRNAに必要なプライマーとなるRNA断片を生成します。

つまり、ゾフルーザは、キャップ依存性エンドヌクレアーゼの活性を阻害して、ウイルスmRNAの合成を直接阻害します。


因みに、ゾフルーザは、1回の服用でインフルエンザ治療が完了する世界初の治療薬になります。
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