火傷(やけど)の応急処置と治療方針
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火傷の正しい応急処置
火傷を負った場合には、すぐに、患部を水道水で冷やす冷却処置を行います。
この冷却処置は、患部を冷却して、火傷によるダメージが皮膚の奥深くに浸透するのを防ぐ目的があります。
また、患部を冷やすことで、受傷後の痛みを軽くすることができます。
火傷の正しい応急処置は、患部を水道水で冷やします。
火傷を負った直後に、まずは、患部を流水にさらしながら、5~10分間冷やし続けます。
そして、患部の熱感や痛みがある程度治まってきたら、バケツに張った水に患部を浸けて、さらに、10~20分間冷やし続けます。
この火傷の冷却処置が終わったら、火傷の広さと深さに応じて、軟膏を塗布したり、医療機関を受診したりします。
なお、水に浸したタオルで患部を冷却する場合には、体温でタオルが温まりやすいため、冷却効果が薄くなります。
そのため、タオルは、小まめに水に浸けなおして、患部を冷やし続けられるようにすることが大切です。
火傷の応急処置時の注意点
火傷の患部を冷やす場合には、いくつかの注意点があります。
まず、患部を冷却する場合には、氷での冷却は行わないようにします。
これは、氷や氷水、保冷剤による冷却が、皮膚に血流障害や凍傷などをもたらし、皮膚組織の障害を拡大させてしまう恐れがあるためです。
そのため、火傷の患部は、冷やし過ぎず、なおかつ、皮膚の奥の組織を守るように冷やし続けることが大切になります。
また、患部を水道水で冷やし続けたり、広い範囲を冷却したりする場合には、体温の急降下に注意が必要となります。
特に、乳幼児や高齢者では、この冷却処置によって、急激に体温が下がり過ぎ、生命を維持するために必要な体力が奪われて、容態が急変する恐れがあります。
次に、火傷の冷却処置のあとには、患部に、消毒液を使用しないようにします。
これは、安易に消毒液を使用することで、火傷による痛みを誘発させてしまう可能性があるからです。
また、消毒液は、火傷の傷を治す手助けをしてくれる常在菌も殺菌してしまいます。
この常在菌は、皮膚のバリア機能を維持する手助けもしてくれていますから、常在菌の殺菌は、傷の治りを遅らせる原因ともなります。
最後に、医療機関を受診する前には、火傷の患部に、軟膏やクリームなどを塗らず、患部の状態がよく分かるようにしておくことが大切です。
熱傷の深さによる分類
熱傷の程度は、範囲と深さで判断しています。
このうち、熱傷の深さは、皮膚の表面から、どの程度奥まで障害されたかを熱傷深度によって分類しています。
<熱傷深度>
・Ⅰ度熱傷:表皮までの損傷
・Ⅱ度熱傷:真皮までの損傷
・Ⅲ度熱傷:皮膚の全層、また、皮下組織に及ぶ損傷
Ⅰ度熱傷とは・・・
Ⅰ度熱傷とは、やけどによる皮膚損傷が表皮内にとどまるものをいいます。
臨床的には、患部に、赤み(発赤)と軽度のむくみ(浮腫)が生じているやけどを指します。
通常、Ⅰ度熱傷のやけどは、2~3日ほどで自然治癒し、傷跡を残さずに治ります。
Ⅱ度熱傷とは・・・
Ⅱ度熱傷とは、やけどによる皮膚損傷が真皮内に達するものをいいます。
臨床的には、赤みやむくみが現れるほか、水疱形成がその特徴となっています。
因みに、このⅡ度熱傷は、真皮の比較的浅い部分まで損傷している浅達性Ⅱ度熱傷と、真皮の奥深い部分まで損傷している深達性Ⅱ度熱傷とに分けられ、その治り具合も異なります。
浅達性Ⅱ度熱傷の治療では、水疱を破らず、できた水泡をやけどの治療皮膜として用います。
こうすることで、新しい上皮が、およそ2週間程度で形成され、水疱を破った場合に比べて、治りが早く、傷跡も残りにくくなります。
一方、深達性Ⅱ度熱傷の治療では、真皮組織の再構築が必要となります。
このため、新しい上皮が形成されるまでに、おおよそ3週間以上が必要となり、治癒の後も、肥厚性瘢痕となって、火傷の痕が残ることが多くなっています。
Ⅲ度熱傷とは・・・
Ⅲ度熱傷とは、やけどによる損傷が、皮膚の全層から皮下組織に達するものをいいます。
このⅢ度熱傷では、皮膚にある痛みを感知する神経の受容体自体が損傷するため、損傷部位の痛みは感じなくなっています。
また、Ⅲ度熱傷の治療では、自然治癒による上皮化は期待できないため、壊死した組織を取り除いて、ほかの部位から皮膚を移植する植皮手術を行います。
治療方針は慎重に決定
一般的に、やけどを負った直後は、熱傷深度を評価することが難しくなっています。
特に、乳幼児では、その判断が難しく、早期の断定的な評価を避けることが望ましいとされています。
Ⅰ度熱傷の治療方針
Ⅰ度熱傷では、自然治癒で回復するため、特別な治療法は必要ありません。
やけどの患部に、ワセリン基剤軟膏か、ステロイドが含まれた軟膏やローションを塗って、経過を観察します。
また、このとき、特に患部を絆創膏や包帯で覆う必要はなく、一般的には、開放療法で十分となっています。
ただし、治療中に患部を紫外線に当てると、色素沈着が生じる恐れがありますので、2~3日程度は、患部を遮光するようにします。
Ⅱ度熱傷の治療方針
Ⅱ度熱傷の治療では、感染を防ぐことと、やけどの組織損傷を深めないことがポイントとなります。
そのため、水疱が形成されている場合には、水疱の膜を破らず、生体包帯として活用します。
この場合、ワセリン基剤軟膏やステロイド軟膏を用いるほか、線維芽細胞の細胞増殖因子が配合されているフィブラストスプレーの外用も、創傷治癒を促進する上で有効となっています。
ただし、水疱の膜が破れてしまった場合や、すでに感染が疑われて水疱を取り除かなければならない場合には、抗菌剤入りの軟膏を塗布して、湿潤療法にて治療します。
抗菌剤入りの軟膏には、バラマイシン軟膏やアクロマイシン軟膏などを用い、患部の湿潤環境を維持するために、ワセリン基剤軟膏を厚く延ばしたガーゼを貼付します。
また、水疱蓋の代わりとして、ハイドロゲル被覆材やアルギン酸塩被覆材を用いて、湿潤環境を保つ方法も効果的となっています。
しかし、すでに感染している場合には、より強い抗菌作用と優れた浸透性のあるゲーベンクリーム(スルファジアジン銀)の使用が必要となります。
Ⅲ度熱傷の治療方針
Ⅲ度熱傷では、やけどの傷口から感染して、敗血症を予防するために、壊死した組織を速やかに取り除くデブリドマン(debridement)をすることが大切になります。
デブリドマン後は、傷を塞ぐために、早い段階での植皮手術が必要となります。
因みに、この植皮には、自分の皮膚を移植するのが最も適していますが、場合によっては、同種皮膚や培養皮膚、人工真皮などを併用して傷口を閉鎖します。
ただ、植皮手術までに期間が必要な場合には、感染防御のために、ゲーベンクリームを使用します。
しかし、ゲーベンクリームは、抗菌性と浸透性が高い一方、白血球減少症や創傷治癒の阻害といった副作用があるため、広範囲熱傷に使用する場合には注意が必要となります。
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