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心不全は、予防可能な病気

心不全(しんふぜん:heart failure)とは、心臓の筋肉などの障害によって、十分な量の血液を全身へ送ることができなくなった状態のことです。
この心不全は、その多くが、高血圧や糖尿病などの基礎疾患(生活習慣病)から引き起こされます。
なお、2017年10月に、日本循環器学会と日本心不全学会が、心不全の定義を共同で発表しています。
それによると、「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」と定義しています。
◎心不全の患者さんは、増加傾向
近年、心不全の患者さんは、増え続けています。
特に、団塊の世代が80代を迎える2030年には、その患者数が130万人に達すると推計されています。
また、心不全を含む循環器疾患の死亡者数は、がんに次ぐ第2位となっていて、今後も増加していくと予想されています。
因みに、心不全は、その症状が良くなったり、悪くなったりを繰り返しながら、だんだんと進行していく病気です。
そのため、心不全の基礎疾患となる生活習慣病をきちんと治療していかないと、心臓の機能が悪化していくことになります。
◎心不全は、誤って理解されていることも・・・
心不全を正しく理解している方は、それほど多くはありません。
一般に、心不全は、「心臓が止まりそうな状態」などのように誤って理解されています。
しかし、心不全とは、正確には、「心臓のポンプ機能が低下しているために、全身に十分な血液を送り出せなくなる状態」のことです。
そのため、心不全を治療せずに放置していると、息切れやむくみ、呼吸困難などが現れるほか、肺うっ血や静脈怒張、肝腫大などを起こし、最悪、死に至ります。
◎心不全の原因は・・・
心不全の原因は、そのほとんどが高血圧や糖尿病などの生活習慣病が関連した心筋梗塞などの血管の病気です。
また、心不全は、心臓の筋肉の収縮力が低下した場合に起こるほか、心肥大が起きる心筋症、心臓の弁に不具合が起きる弁膜症、脈が乱れる不整脈、先天性心疾患などでも引き起こされます。
・生活習慣病:高血圧、糖尿病、脂質異常症、動脈硬化症、脳血管障害など
・心筋梗塞
・大動脈弁狭窄症
・僧帽弁閉鎖不全症
・不整脈
・先天性心疾患
など
◎要注意な症状
普段通りの生活をしているのに、急に、息切れやむくみが現れてきたら、要注意です。
また、血圧が高い場合や脈が乱れる場合には、心不全を起こしている可能性があります。
なお、体重が、2~3日で2kg以上急激に増えたときにも、心不全が悪化している可能性があります。
これは、心臓が十分に血液を送れないため、体のあちこちに水分が溜まって、体重増加が引き起こされているからになります。
そのため、これらの症状に気がついたときには、早めに循環器科を受診することが大切です。
◎心不全は予防できる病気
心不全にならないためには、生活習慣病を早期発見・早期治療して、心臓の機能を低下させないことが大切になります。
また、心不全と診断された患者さんは、適切な治療を受けて、その症状を進行させないように予防していくことが必要になります。
ただし、心不全の患者さんのなかには、自覚症状が治まったため、通院を止めてしまう方がいます。
これは、非常に危険なことで、心不全は、一時的に症状がなくなっても、病気が完治したことにならないからです。
なお、心不全の患者さんは、その症状が急に悪化することもあります。
そのため、定期的に通院していても、次の予約日までに、息切れやむくみ、急な体重増加などが現れた場合には、通院日を待たずに受診することが大切になります。
◎心不全は、薬物療法と生活習慣の改善が大事
心不全は、その基礎疾患となる高血圧や糖尿病などを優先して治療していきます。
そして、その多くは、薬物療法が中心となり、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬などの標準治療薬を服用していきます。
また、臓器うっ血がある場合には、利尿薬で体内の水分量を調整していきます。
そして、心筋梗塞を起こすリスクが高い方には、抗血栓薬を服用してもらい、血栓症を予防していきます。
一方で、患者さん自身が、生活習慣を見直して、カロリーや塩分の取り過ぎ、喫煙、アルコールの摂取、運動不足などを改善していくことが必要です。
なお、これらのセルフケアは、主治医と相談して、無理のない範囲で行っていくことが大切になります。
例えば、運動を習慣化するために、1回30分程度のウォーキングを生活に取り入れ、軽い運動をこなせる体力をつけていきます。
そして、週に、3回程度は、体を動かす機会を作り、血圧や脈拍、体重なども毎日記録して、体調を管理していきます。
因みに、市販されている心不全手帳を活用すると、上手にセルフケアを進めていくことができます。
◎自己判断での治療中止は、たいへん危険
心不全の患者さんのなかには、症状が一過性に良くなったからといって、自己判断で薬を止めてしまう方がいます。
これは、非常に危険な行為で、心不全を悪化させてしまうことにつながります。
そもそも、心不全は、心不全を起こす基礎疾患が治らない限り、良くなることはない病気です。
そのため、症状が良くなったからといって、基礎疾患そのものが完治したことにはなりません。
なお、心不全は、命を縮める病気ですが、予防可能な病気でもあります。
そのため、いったん、心不全の治療を開始した方は、症状が落ち着いても自己判断で薬を止めずに、継続治療を根気よく行っていくことが大切になります。